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サブプライム問題の当局側の重大な過失であった。
住宅バブルが自己の重さに耐えられず崩壊に向かい、住宅価格の前年比上昇率がゼロになるのが20O6年6月だが、この時点と、FRBが利上げを始める20O4年6月との聞の2年間は民間金融機関にとっても難しい局面だった。
ウォール街で資金運用をしている人たちからすると、ITバブルの時代はIT関連の産業からいくらでも資金需要があった。
そのITバブルが弾けたあとも、住宅バブルが続いたから、住宅関連からの資金需要は十分あった。
しかも当時は、短期金利は急激に下がっていて、最終的に一%までいったわけだから、その短期金利を上回るリターンを出しておけば、彼らに資産運用を依頼した人々は満足していた。
20O4年6月から、短期金利はどんどん上がり始めた。
資金をウォール街に預けている顧客からは、「短期金利以上のリターンを上げてくれ」という声が上がる。
長期金利は上がらない。
それどころか長短金利差はどんどん縮小し、彼らの運用益は圧縮されていった。
もうこの時点で住宅バブルは3年続いていた。
とサブプライム問題は戦後故止、の金融危機いうことは、新しい家を買おう、もっと大きな家に移ろうと考えていた人たちは、この3年間に、もうかなりの人が新しい家に移っていた。
住宅市場は飽和状態になりかけていたのである。
本来なら、その時点で企業部門が新しい資金需要を提供してくれればよかったのだが、「借金拒絶症」にかかった彼らは借り手として姿を現さなかった。
ウォール街で資金を運用している人たちからすれば、これはたいへんな事態であった。
彼らからの資金需要は飽和状態になっていた。
この3つの要因が重なり、一10O4年ごろのウォール街のファンド・マネージャーたちは窮地に陥ってしまった。
そこに知恵者が出てきて「サブプライムのマーケットがある」という悪魔の瞬きを彼らの耳元に吹き込んだのである。
ここから今回のサブプライムの問題が本格的に始まっていく。
サブプライム市場に注ぎ込まれた資金はなんと一兆ドルサブプライムローンというのは、言うまでもなく優良顧客(プライム層)向けではない住宅ローンを指す。
当然のことながら、この種のローンの借り手は信頼度が低いとされる。
言い換えれば、本来であれば、借りられない人たち(低所得者だけではなく、過去にデフォルト歴があるなど信用力の低い人も含まれる)を対象にしたローンである。
普通のマーケットでは借りられない、あるいは借りてはいけない人たちのためのローンと言ってよい。
信用力は低いけれども、高い金利を払う用意があるという人を対象にしたローンだから、高い金利を払えば借りられる。
そうしたサブプライムローンのマーケットは以前から細々と存在していた。
切羽詰まったウォール街はそんなサブプライムローンに注目して、「ここには未開拓の大きなマーケットがある」と考えた。
サブプライムはプライムよりも高い金利をとれるわけだから、短期金利がどんどん上がっていっても利益を確保できる。
もちろんデフォルト・リスク(債務不履行の危険性)はあるが、当時、住宅価格は急上昇しており、そこからくる住宅の担保価値の増加がデフォルト・リスクを相殺することになるだろうと思われた。
日本の不動産バブルの時も同様であったが、当時は住宅価格が急上昇していたわけだから、とにかく家さえ買っておけば資産の増加が見込めた。
仮に最初の2年間、住宅価格が年率10いうことは資産の20%を居ながらにして獲得したことになる。
これをアメリカのサブプライムローンに当てはめると、家という大きな資産の20%を自分で持っているということになれば、その人の信用力が高まったということで、サブプライムローンからプライムローンに借り換えることが可能になる。
2年後に金利の低いプライムローンに乗り換えられるということは、サブプライムの高い金利は最初の2年間だけ払えばよいということになる。
それでは、当初の2年間の毎月の高い金利下における支払いをどうするかという問題が残るが、日本でも使われている優遇金利が適用され、この期間のローン支払い額は本来の水準よりずっと低い所に抑えられた。
当初の優遇金利が終了するまでにプライムローンに借り換えることができれば、毎月の支払いの大幅な上昇は回避できる。
当時のセールストークだった。
私もよく覚えているが、20O4年から20O5年にかけてアメリカでテレビをつけると、かなり著名な人までが、「いま住宅を買わなくていったいいつ買うのか。
こんなチャンスは2度とない」などと発言する場面にしばしば遭遇した。
アメリカでは「自分の持ち分」のことを「エクイティ」と言うが、サブプライムで借りても最初の2年間で、エクイティが20%になった時期がある。
そうなれば金利の低いプライムローンに乗り換えられるのだから、いま家を買わないのはパカだという風潮がアメリカ中を席巻していたのである。
そういう熱気のなかで多くの人たちがサブプラムローンを借りたのである。
「借金拒絶症」にかかった企業からの資金需要を失ったウォール街は、サブプライムローンの魅力を煽り立て、それを低所得者たちに貸しまくったのである。
そこで、なんと2年間で一兆ドル(邦貨換算10O兆円以上)の資金がこのサブプライムのマーケットに注ぎ込まれたのである。
従来、細々とやっていたサブプライム市場にはそれなりの規律とインフラがあったのだが、一兆ドルもの資金が流れ込んできたために、それらの規律は完全に押し流されてしまった。
質などは無視して、とにかく量を確保しようという雰囲気が業者間に蔓延していった。
なかには、借り手の所得も資産も過去の返済履歴も何も調べないまま、とにかくローンを押しつけてしまおうという荒っぽい連中も大勢登場した。
本来であれば、家など持てないような人にまでサブプライムローンで家を買わせ、またこの種の買い手が現れたことで住宅市場はさらに過熱し続けることになったのである。
ところで、サブプライムにも固定金利のローンと変動金利のものがある。
固定金利であれば最初から決まった返済額が(3O年であれば)30年間続く。
この金利固定型のローンの場合サブプライム問題は戦後最悪の金融危機はサブプライムで借りた人でもさほどデフォルト(債務不履行)を起こしていない。
問題は、変動金利ローンの方であった。
固定金利で借りる人は、たとえサブプライムであっても当初から毎月の返済ができる人以外は借りないが、変動金利の方は、前述のように最初の家を買っちゃったほうが得ですよ」と言われて買ってしまった人たちが大勢いたのである。
実はプライム市場もデフォルトの危機に見舞われている彼らにとっては、金利が本来の水準にリセット(上がる)する前に住宅価格が20%上がっていれば万事うまくいくのだが、20O6年の6月には住宅価格の上昇率が前年比ゼロになり、そこから下落に転じている。
ということは、20O6年の6月が住宅価格のピークだったのである。
そこからはどんどん価格が下がっていく。
そうなると、当初想定していたエクイティを望めないどころか、価格の下げ幅によってはマイナスのエクイティになってしまう。
そうなればプライムローンに乗り換えることはできない。
ということは、これらの借り手は当初の優遇金利が終了した時点で、サブプライム本来の高い金利を払い始めなければならなくなる。
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